Stanford大学とU.C.Berkleyに行ったときの出来事

はてなでの私に対する皆さんの認識というと、多分Python使いとかVimユーザとか、QRコードデコーダの開発者というのがメインだと思います。それで、あまり認識されてない気がしますが、私は普段は大学院生として大学院で研究に取り組んでいます。

実は、縁あってタイトルの2つの大学には行ったことがあります。期間は、前者は短期滞在で数日、後者は共同研究という形で6週間ほどだったのですが、この時の体験が実はシェアすべき、結構面白いものだったのではないか、ということで書いてみることにしました。

Stanford大学での出来事

私が行ったのはDBLabが、InfoLabに改組された後でした。InfoLabというのは、id:taroleoさんによるデータベース教科書の紹介エントリ でも紹介されているHector Garcia-Molina先生が率いるグループで、過去にはGoogle創始者などを輩出したことでも有名です。データベースの教科書をいくつも書いておられるJeffrey D. Ullman先生は最近引退したそうですが、普通に廊下を歩いてました。世界的に有名な先生が普通に廊下を歩いていたりする、Stanfordはそういう場所のようです。この分野はこの辺を中心に回ってるんだな、と軽い嫉妬を覚えました。

研究用のスペースとしては、the Gates Computer Science Buildingをメインに使っているようです。ビル・ゲイツ氏の寄付によって設立されたというあの建物です。2階以上には先生方や学生の研究スペースになってる部屋、地下には外部の方を招いての講演が出来るホールがあるほか、1階に会議室などがあったりします。ちなみに私が見た学生が使っていたPCのOSはUbuntu Linuxで、モニタは30インチぐらい2580x1600ピクセルの巨大なものを使ってました。あと、スポンサーの手前か先生はWindowsマシンでした。

また、InfoLabグループのランチミーティング(みんなでお昼ご飯を食べながら、カジュアルな感じで、最近行った学会出張の報告や学生が研究の進捗報告をしたりする)もここで行われています。

最近InfoLabからGoogleに就職した元学生がたまたまInfoLabに遊びに来ており、ランチミーティングで近況を話していたのですが、そのやりとりが面白かったのでご紹介。

先生「Googleではどんな仕事をしているんですか」

元学生「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする仕事をしています」(もちろんジョーク)

先生「とても詳細な説明をありがとう」
(会場笑い)

(この後真面目な近況報告があったけど、守秘義務があるのかそんなに詳しい内容ではなかった)

もうひとつ、私が訪問した少し前に、とあるStanfordにゆかりのある先生が亡くなったそうで、大学内でお葬式が行われており、たまたまいろんな先生が集まっていたのですが、そこで面白い会話があったのでご紹介します。

(とある先生が、有名なエッシャーの騙し絵(白い鳩がいつのまにかカラスになるあれ)が柄になったネクタイをしているのを見て)

私「いいネクタイですね」

先生「私がネクタイをする場面は2種類しかない。一つは人が死んだとき、
   もう一つは我々にお金をくれる人と会うときだ。ワッハッハ」

ノーネクタイでリラックスしたStanfordの雰囲気、企業などから大学への研究補助金、といった現地の文化がよく出ている発言だと思います。

こんな感じで先生と学生の間でユーモアやウィットに富んだ会話を楽しんでるのがすごく良いなーと思いました。

U.C.Berkeleyでの出来事

データベースの分野、特にトランザクションの研究における大御所であるところのJim Gray先生が教鞭を取っておられた大学でもあります。
私がBerkeleyに滞在中だった期間がたまたま、先生が海上で行方不明になられて1年あまりが経過した時期と重なっていて、彼の業績を讃えるセレモニーが行われていました。彼の研究上の同僚など大勢の研究者が世界中から集まって来ていたのが印象的でした。日本から渡米して駆けつけたらしき先生もいらっしゃり、それだけ、生前した仕事が広範に影響を与えるものだったのでしょう。

影響力のある仕事をした人は、死してなお、いろんな人を結びつけるのだなーと思った出来事でした。

しかしCSの分野でcitation count4桁、2000超(Google Scholar調べ)というのは本当に大きい業績だと思います。ちなみに、同じ規模の引用数の論文としてはGoogle創始者ラリー・ペイジ氏らがStanford大学の大学院在学中に書いたPageRankの論文などがあります。