水村美苗「日本語が亡びるとき」を読んだ

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

これらのエントリでかなりプッシュされていたので試しに読んでみました.
水村美苗「日本語が亡びるとき」は、すべての日本人がいま読むべき本だと思う。 - My Life Between Silicon Valley and Japan
404 Blog Not Found:今世紀最重要の一冊 - 書評 - 日本語が亡びるとき

以下,主な箇所の自分なりの要約です.

学問としての真理の追究(自然の理が対象)

  • 学問の過程で新たな得られた叡智は<読まれるべき言葉>として,なるべく多くの<叡智を求める人>と共有し,蓄積されるべきである
  • これを達成するには,当世で利用出来る者が最も多い<普遍語>で書くのが,最も効率が良い
  • 結果として学問では,<読まれるべき言葉>が普遍語で書かれる,それを読んだ者が,それを基にさらに普遍語で書く,といったフィードバックが発生し,普遍語による叡智の蓄積が促進される
  • 普遍語の役割をもつ言語は古代はラテン語に始まり,近代はドイツ語・オランダ語・フランス語,現代は英語と移り変わってきた

文学としての真理の追究(人間の精神が対象)

  • 文学の過程で新たに得られた<読まれるべき言葉>は,<現地語>が書き言葉として発展した<国語>で記述され,今までの<読まれるべき言葉>のリストに追加される
  • 文学はオリジナルで記述された言語と不可分であるため,オリジナルのテキストそのものを理解する必要がある
  • しかし,日本では国語の大衆化によって,近代に書かれた漱石などの<読まれるべき言葉>に用いられる歴史的仮名遣いを理解する人が減ってきている
  • 日本語が亡びるとき」とは,将来的にこのような日本語の<読まれるべき言葉>を理解出来る人が居なくなったときである

今までの<読まれるべき言葉>に対するインターネットの影響

  • デジタルスキャニングと検索の技術は,が英語一強の流れをさらに加速する
  • 過去のすべての叡智がデジタル化されたとき,もっとも恩恵を享受するのは,今までの<読まれるべき言葉>総量が最も多い<英語で叡智を求める人>である
  • しかし人間の時間は有限なので,ペタバイト級の量の叡智から<最も読まれるべき言葉>を探し出すランキングのシステムが必要になる.
  • そのとき,<叡智を求める人>が最も意味のあるランキングを得るために,ランキングのシステムをランキングするシステムが必要になるだろう

11/11 15:27 追記

なんかこの本,英語圏でも注目されはじめているみたいなので,英語でも感想を書きました.Yusuke Yanbe's blog: When Japanese Language Falls